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映画館でバレエが観られる?
初心者でも楽しめる?
見どころは?

2018年秋から始まるロイヤルバレエ団映画シーズン。第1弾はの大人向けバレエ「うたかたの恋」。「マイヤーリンク」とも呼ばれている作品です。

初心者でも肩ひじ張らずに楽しめるのが、映画でバレエです。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録あり。ぜひ男性にもバレエを観に行ってもらいたいと思っています。

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kazu

今回はドロドロの人間模様を描いた「うたかたの恋」を見た感想をご紹介します。

※3分ほどで読み終わる記事です。この記事はまだ観たことがない方も、観たことがある方も楽しめる内容になっています。

映画でバレエ

「映画でバレエ」では1部と2部、2部と3部の幕間に解説が入ります。今回は、振付の故ケネス・マクミランの奥様が登場し、当時のことを話していました。

詳しいあらすじはこちらの記事で紹介しています。

キャスト

ルドルフ皇太子・・・スティーヴン・マックレー(Steven McRae)
マリー・ヴェツェラ・・・サラ・ラム(Sarah Lamb)

ステファニー皇妃・・・ミーガン・グレース・ヒンキス(Meaghan Grace Hinkis)
フランツ・ヨーゼフ皇帝・・・ギャリー・エイヴィス(Gary Avis)
エリーザベト皇后・・・クリステン・マクナリ(Kristen McNally)
ラリッシュ伯爵夫人・・・ラウラ・モレーラ(Laura Morera)
ヘレーネ・ヴェツェラ夫人・・・エリザベス・マクゴリアン(Elizabeth McGorian)

ブラットフィッシュ・・・ジェームス・ヘイ(James Hay)
ミッツィー・カスパール・・・マヤラ・マグリ(Mayara Magri)
”ベイ”・ミドルトン大佐・・・ネマイヤ・キッシュ(Nehemiah Kish)
ハンガリーの4人の高官・・・
マルセリーノ・サンベ(Marcelino Sambé)
リース・クラーク(Reece Clarke)
トーマス・モック(Tomas Mock)
カルヴィン・リチャードソン (Calvin Richardson)

管弦楽:英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
指揮:コーエン・ケッセルス
収録:2018年10月10・15日 ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン)

精神崩壊したルドルフを演じ切るスティーヴン・マックレー

スティーヴン・マックレーのルドルフはすさまじかったです。明るいイメージが強い彼ですが、今回は封印。笑顔が1mmもなかったです。全編踊りっぱなし、演技しっぱなし、出ずっぱり。ケガから復帰したばかりとのことですが、本当に凄まじかったです。

スティーヴン・マックレーはテクニックが抜群なので踊りが本当に安定していて、演技にまで細かい動きがみられます。マリー・ヴェッツェラを演じたサラ・ラムとはよく一緒に踊っているので、パートナーシップも抜群です。

面白かったのは、幕間のインタビュー映像で「踊りこみ過ぎると安定し過ぎて、不安定なスリリングな感じがなくなってしまう」と語っていたこと。振付は決まっているけれど、お互いに相手がどう出るかわかっていない、という前提で踊る。あたかも相手の動きを知らないという前提で反応をする、ということを常に心がけているようです。

これは最大の矛盾です。もしからしたロングラン公演でよく言われる「初心忘れるべからず」に近いものがあるかもしれません。同じ公演を続けると、「毎日が初演」という言葉をよく聞きます。もちろん初演のワケはないんですが、初演のように新鮮な気持ちで演じるという意味です。これに近いものを感じました。

サラ・ラムを含め、5人の女性とパ・ド・ドゥを踊ります。体力的な負担もかなり大きいはずですが、最後まで全身全霊で踊っていて集中力の高さがスゴかったです。

スティーヴン・マックレーが演じるルドルフですが、3幕に銃の暴発のシーンがあります。この暴発でルドルフがひとり事故で殺してしまいます。スティーヴン・マックレーのルドルフは、「不慮の事故」という感がかなり強かったです。皇帝一行が集まっていましたが、全員の冷たい視線がとにかく痛かった…。

スティーヴン・マックレーはもともと素晴らしいダンサーですが、ますます素晴らしくなっていて、未だに成長する姿にただただ感動しました。

サラ・ラムの演技力

イメージは「ザ・ストイック」。バーレッスンの様子などyoutubeに上がっていますが、常に高みを目指している感じ。


( 1:13:43 あたりでサラ・ラムのフェッテが始まります。)
( 1:11:50 あたりではスティーヴン・マックレーが軽々としたジャンプを披露してます。)

肉体もどんどんアスリートみたいになっている印象です。共感したサラ・ラムのインタビュー記事です。

バレエにはある種の”文学的な味わい”があるべき。

つまり私は目の前で10回転するダンサーを見て「ワオ!」と即物的に興奮するようなエンターテイメントを届けるのではなく、劇場を後にした観客がダンスの物語性や美しさをゆっくりと脳内で反芻できるようなそんな体験を授けたいんです。

NBSのインタビューより

彼女は、ロイヤルバレエ団が大切にしている演劇的なダンスを体現しています。とはいえ、サラ・ラムは長い間「当たり役がない」と言われていました。

なので、彼女の映像作品が出始めたのも最近のことのように思います。「不思議の国のアリス」で注目されたものの、結局映像化されたのはイギリス出身のローレン・カスバートソン。

なので、日本に来てくれないとあまり観る機会がありません。僕は前シーズンのサラ・ラムの「マノン」を観て、鳥肌が立ちました。

今回の役柄は15歳から17歳までのたった2年間。史実では、ルドルフとマリーが二人きりで会うようになったのは、たった2ヶ月と言われています。17歳でありながら野心、欲望、妖艶、危さ、があります。自殺を簡単に承諾してしまう、盲目的な強さもありました。サラ・ラムの良さは作品ごとに違う表情が出せること。

サラ・ラムはいまやオールマイティーなダンサーで、どの作品を踊っていても非常に満足できるダンサーです。

エリザベート皇后がただただ冷たい・・・

今回はエリザベートからルドルフへ愛情が感じられなかったのが残念でした。第1幕、ルドルフは母親のエリザベート皇后の同情を引こうとしますが、エリザベートは気にも留めません。エリザベートはとにかくルドルフには冷たいです。これがのちの悲劇につながるわけですが、親子の難しさが表れている場面です。

僕の解釈では、エリザベートは息子を愛しているものの、王家の血を受け継ぐものとして勝手な行動、自由な行動は許されない。そのため突き放している、と思っています。そのため、ルドルフの後ろ姿を見つめるシーンなどは「人知れず愛があるといいんですが・・・」まったくそうした雰囲気が感じられませんでした。

今回の一番の謎だったシーンが第3幕のルドルフとラリッシュ婦人とのシーンです。

ラリッシュ伯爵夫人がルドルフを慰めているのですが、そこにエリザベートが入ってきます。そしてすごい剣幕でラリッシュ伯爵夫人を追い出してしまいます。そこにルドルフへの愛は感じられませんでした。そして、体面を保ちたいという感じもしなかった。そのため、エリザベートの感情が読み取れませんでした。これは他のダンサーが踊っている時に解決したいと思います。

今回は、とにかく冷たい感じがして、ただただルドルフに同情してしまいました。そういう流れでもいいんだと思いますが、ルドルフは親に愛されず崩壊していった、という人物像ではない気がしていて…。再度観る機会があれば、また考えてみます。

ブラットフィッシュ

第3幕。ブラットフィッシュから、二人を現世に留めておきたいという意識が感じられました。軽快な振付に似合わない悲しい感情。

他のキャストでもぜひ見たい「うたかたの恋」

今回実はファーストキャストで、日本人プリンシパルの平野亮一さんがルドルフ皇太子役でデビューしています。

平野さんとメリッサ・ハミルトンのリハーサル風景です。

本来は、エドワード・ワトソンが踊る予定でしたが、ケガで降板したため平野さんが代役でデビューとなりました。ファーストキャストデビューは日本人としても応援してしまうイベントです!

エドワード・ワトソンは顔色的に非常にルドルフ皇太子に合っているので、こちらも気になるキャストでした。また、今回のスティーヴン・マックレーは別の日に、高田茜さんと一緒に踊っています。

高田さんは2,3年前の「うたかたの恋」の公演でサラ・ラムの降板により、1週間にも満たない期間で代役をやり切りました。

kazu

おー!!

「代役で準備期間がわずか…」という話です。時々バレエで、こうした話を見かけますが、こういう話、大好きです!

高田さんのマリーはその時も評判が良かったですが、準備万端の状態ではどんな踊りになるのか、非常に気になるところです。また、もう辞めていたと思っていたティアゴ・ソアレスもルドルフを踊っていたとのこと。こちらも気になります。

小林ひかるさんが引退

最後に、日本人の小林ひかるさんが「うたかたの恋」をもって引退となりました。会場も大盛り上がりとなったようでとても嬉しくなりました。

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小林ひかるさんはファースト・アーティスト。旦那さんのフェデリコ・ボネッリはプリンシパル。階級が違うので、なかなかふたりが一緒に踊るのをロイヤルバレエで観る機会はありませんでした。

今回の「うたかたの恋」ではフェデリコ・ボネッリがルドルフを演じ、小林さんがラリッシュ婦人を演じました。最後の共演で、一緒に踊るシーンもありました。舞台上において夫婦であることは関係ないけど、二人の踊りは特別なパ・ド・ドゥだったんだろうな、と思います。

小林さんは間違いなくロイヤルを支えたダンサーです。数々の作品で主役を踊っていました。

kazu

15年間、おつかれさまでした!

今回は「マイヤーリンク」を観た感想でした。
どうもありがとうございました。