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「椿姫」はどんなストーリー?
初心者でも楽しめる?
見どころは?

物語バレエの最高傑作とも言われる「椿姫」。

すでにあったオペラ作品に影響されることなく、振付師ジョン・ノイマイヤーの独自の解釈で創作されました。

使用されているショパンの音楽の方が先に作曲されているのに、「椿姫」のために作曲されたんじゃないかと勘違いしてしまうほど作品にマッチしています。

僕はとにかくこの作品が大好きで、全幕では10回ほど、ガラ公演(ハイライトの場面だけを集めた公演)でも15回以上観ていると思います。

この作品を紹介できるのが何より嬉しいです!

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録あり。ぜひ男性にもバレエを観に行ってもらいたいと思っています。

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kazu

今回はノイマイヤー版「椿姫」の初心者でも楽しめる作品解説です。

※5分ほどで読み終わる記事です。この記事はバレエ鑑賞初心者の方のために書いています。初めて「椿姫」を観ても映像で予習できるようになっています。

バレエダンサーが引退に選ぶ作品

多くの女性バレエダンサーを惹きつける「椿姫」。

アレッサンドラ・フェリ、アニエス・ルテステュ、エレオノーラ・アバニャートといった名バレエダンサーが引退公演に選んでいます。

作品の中で踊られる3つのパ・ド・ドゥ(2人の踊り)はとても人気があります。ガラ公演でもよく見かけるので、知っておいて損はありません。

みる音楽、豪華な衣装、美しい美術でありながら、この作品には孤独がかなりつまっています。

主人公のマルグリットは高級娼婦という豪華で自堕落じだらくな生活の中にありながら、とてもシンプルな愛に幸せを見つけます。

しかし、その愛は長続きしません。自分勝手な人生を歩んできたマルグリットは対価を支払わされることになります。

美しさと残酷さが交互にくる内容で、観終わったあとかなり複雑な気持ちになります。

制作

現代を代表する振付家のジョン・ノイマイヤーが、マリシア・ハイデという名バレエダンサーのために創作した作品です。

初演:1978年11月4日

ドイツ:シュツットガルト・バレエ団(ヴュルテンベルク州立劇場)

振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
原作:アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)「椿姫」

日本での初演は振付のジョン・ノイマイヤーが芸術監督をつとめるハンブルク・バレエ団によるものでした。初演から20年ほどたった1997年1月28日と少し遅いです。

全3幕

プロローグ・1幕:45分
2幕:40分
3幕:45分

衣装がとても豪華で、細部にこだわり美しく作られています。それに対し、舞台セットはかなり簡素なシーンも多いです。

ここにはジョン・ノイマイヤーの意図が大きく反映されています。ノイマイヤーは出演者全員が舞台上で生き生きと動くことで、舞台の空間を埋めることを求めています。そのおかげもあって出演人数はふつうのバレエほど多くないのですが、少ない印象は受けません。

振付の評価はとにかく高いです。とくに3つのパ・ド・ドゥが素晴らしいです。何度か血が流れているのを見たことがあるのですが、それだけスリリングなリフトがたくさん出てきます。ダンサーが命がけで「椿姫」を表現しています。

登場人物

主なキャスト

マルグリット・ゴーティエ:高級娼婦・椿姫
アルマン・デュヴァル:ブルジョワ階級の青年
デュヴァル氏:アルマンの父
公爵:マルグリットのパトロン
プリュダンス:マルグリットの仲間
ガストン:アルマンの友人
N伯爵:マルグリットの愛人志願者
オリンピア:マルグリットの友人でもある高級娼婦
マノン:劇中劇「マノン・レスコー」の登場人物
デ・グリュー:劇中劇「マノン・レスコー」の登場人物
ナニーナ:マルグリットの使用人

主役ふたりの人生をすぐそばから観ているような感覚になる作品です。観客だけがマルグリットとアルマンのすれ違いを観ることができます。

そのすれ違いがあまりに残酷です。でも残酷なのに愛があふれている。

そこに感動してしまうのだと思います。見る人によって感想がまったく変わるバレエです。

時代がたってもすたれる感じがまったくなくて、たぶんこれからも上演され続けるだろうと思わせるバレエです。

ショパン

ショパンの音楽が全編に使われています。

ショパンはピアノ曲が多いため「椿姫」ではピアニストが2人、オーケストラに入っています。しかもピアノのソロコンサートを開くようなピアニストが2人入っているので、とても贅沢です。

特に第2幕はピアノ曲のみで構成され、ピアニストが舞台上に出演者としても登場します。

ショパンの音楽がとにかく「椿姫」にマッチしているのですが、ショパンの人生に秘密があるかもしれません。

「椿姫」とショパンの共通点はフランス出身であること。

そしてショパンが病弱だったこと。ショパンの曲にはどことなく暗い雰囲気が漂っているので、「椿姫」との相性がかなりイイと思います。

あらすじ

19世紀のパリ。

曲名も一緒に載せていきます。

プロローグ

音楽

「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58より第3楽章ラルゴ」

ある住まいで遺品の競売が行われている。

家の持ち主は高級娼婦のマルグリット・ゴーティエといい、結核が原因で亡くなってしまった。

そこに飛び込んでくるひとりの青年。青年の名前はアルマン・デュヴァル。貴族の出身で、マルグリットと深い仲であった。

アルマンはマルグリットとのヴァリティエ座という劇場での出会いから回想をはじめる。

第1幕

音楽

「ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21」

美しく奔放な高級娼婦のマルグリットのまわりは金持ちの男性たちであふれている。心配なのは時々おそってくる咳の発作である。

経験豊富なマルグリットと対象的な青臭あおくさいアルマン。出会った時からお互いになんとなく惹かれ始めるマルグリットとアルマン。

上演後、マルグリットは友人のプリュダンスとガストンに頼みアルマンを自宅に招待する。最初はアルマンのまぶしすぎる純愛をからかっていたマルグリット。しかし、ついにマルグリットもアルマンを受け入れるようになる。

ふたりの関係は深くなっていくものの、マルグリットは生活を変えることはない。パトロンと相変わらず豪華な生活を続けている。

そんなとき関係を続けるパトロンである老公爵がマルグリットの健康を心配し、田舎の別荘を用意してくれることになる。仲間を引き連れ田舎に静養しに行くマルグリットにアルマンもついていく。

青のパ・ド・ドゥ

第1幕の大きなみどころはマルグリットがアルマンに心を許すパ・ド・ドゥです。最初は身体をこわばらせていたマルグリットが後半になるとアルマンに身体をあずけるリフトへとつながっていきます。

シュツットガルト・バレエ団よりマリア・アイシュバルトとフリーデマン・フォーゲル。

第2幕

音楽

「ワルツ第2番『華麗なるワルツ』変イ長調 作品34の1」
「『3つのエコセーズ』作品72の3」
「ワルツ第4番『華麗なるワルツ』ヘ長調 作品34の3」
「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58より第3楽章ラルゴ」
「24のプレリュードより 第2番 イ短調 作品28の2」
「24のプレリュードより 第17番 変イ長調 作品28の17」
「24のプレリュードより 第15番 変ニ長調 作品28の15」
「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58より第3楽章ラルゴ」
「24のプレリュードより 第2番 イ短調 作品28の2」
「24のプレリュードより 第24番 ニ短調 作品28の24」

別荘で相変わらず豪華な生活を続けるマルグリット。そのそばにはいつもアルマンがいる。

幸せな時間を過ごす、マルグリットとアルマンと仲間たち。

しかし、そんなマルグリットをこころよく思わない公爵がアルマンを追い出そうとする。

そんなとき、マルグリットがアルマンの肩を持ち、アルマンを愛していることをみんなの前で告げる。

アルマンとの愛を公表したことで誰からの援助もなくなったマルグリット。それでもマルグリットは幸せだった。

ここでマルグリットに手紙が届く。ふたりのことを知ったアルマンの父デュヴァル氏からだった。

アルマンが外出中に訪ねてきたデュヴァル氏。貴族の息子と高級娼婦の愛を認めるわけにはいかないため、息子の将来の邪魔をしないようマルグリットを説得する。

マルグリットは自分の愛を優先することでアルマンの人生をつぶすことはできないと悟る。

アルマンへの愛ゆえにマルグリットはふたりの関係を終わらせることを決意するのだった。

最後にアルマンと幸せな時間を過ごすマルグリット。アルマンを乗馬に送り出すと、そっと荷物をまとめパリに戻ってしまうのであった。

戻ってきたアルマンはマルグリットからの手紙を受け取る。そこには高級娼婦に戻ることが書かれている。急いでパリに戻るアルマン。

到着したアルマンは客をとるマルグリットを見つけてしまうのだった。

白のパ・ド・ドゥ

作品全体で一番幸せなシーンです。とくに結末を知りながらこのシーンを観ているととにかく悲しいシーンです。

パリ・オペラ座バレエ団よりイザベル・シアラヴォラとカール・パケット。

第3幕

音楽

「ポーランドの歌による大幻想曲 イ長調 作品13よりラルゴ・マ・ノン・トロッポ」
「ポーランドの歌による大幻想曲 イ長調 作品13よりアンダンティーノ」
「ポーランドの歌による大幻想曲 イ長調 作品13よりアレグレット」
「ポーランドの歌による大幻想曲 イ長調 作品13よりヴィヴァーチェ」
「バラード第1番 ト短調 作品23」
「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22」
「ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 作品11より第2楽章」
「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58より第3楽章ラルゴ」

マルグリットとアルマンが別れてから時間がたった。マルグリットはすでに結核におかされ、死がせまっていることが見てとれる。

マルグリットへの怒りがおさまらないアルマンは、わざとマルグリットの友人であるオリンピアと付き合っている。

そんな時、マルグリットとアルマンはパリのシャンゼリゼの街角でたまたまた再会してしまう。

その状況に耐えられないマルグリットはアルマンに傷つけるのをやめてほしいと頼みに行く。

アルマンはやはりマルグリットを愛していることに気づく。アルマンを愛しているマルグリットは、その愛に応えてしまう。

しかし、我に返ったマルグリットはまたもアルマンの元を去ってしまうのであった。

今度こそマルグリットを許すことのできなアルマン。社交場でふたりはまたも再会してしまう。

その状況に耐えられないアルマンは酒で酔っ払っている。そしてマルグリットに封筒を手渡す。

マルグリットは期待を込めてその封筒を開ける。しかし、封筒の中身は札束だった…。それは高級娼婦に対する報酬で、全員の前でマルグリットを侮辱ぶじょくする行為だった。

アルマンの回想はここで終わる…。

黒のパ・ド・ドゥ

お互いにお互いを食い尽くすようなパ・ド・ドゥです。身体は近くいのに、なぜか心が遠くにあるように感じてしまうふたりです…。

本家ハンブルク・バレエ団よりシルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコ。振付のノイマイヤーを芸術監督に持つハンブルク・バレエ団の「椿姫」は格別です。

マルグリットの日記

ふたたびオークション会場。

するとそこにマルグリットの使用人が現れる…。

そして、マルグリットの日記をアルマンに渡すのであった。

日記にはマルグリットの必死の思いが記されていた。

マルグリットの願いはアルマンにもう一度会うこと。フラフラの身体でもアルマンと出会った劇場に出かけることもあった。

身体が弱るにつれ、金銭的にも困窮こんきゅうしていくマルグリット。

日記には死への不安とアルマンへの想いが綴られていた。

しかしマルグリットの想いが通じることはなく、孤独に死を迎えるのであった…。

残されたアルマンは日記をそっと閉じることしかできない。

オペラとの違い

バレエの「椿姫」よりもヴェルディ作曲のオペラ「椿姫」の方が圧倒的に知名度があります。

ノイマイヤーがバレエ版を発表したときにヴェルディの曲を使わなかったことは、多くの観客にとって意外なことでした。

一番の違いは最終場面です。

オペラ版では、死の床につくヴィオレッタ(マルグリット)のもとにアルフレード(アルマン)が駆けつけます。ふたりは再会することができ、アルフレードに見守られながらヴィオレッタは亡くなります。

めがね

バレエ版よりもかなり救いのある終わり方です。

劇中劇の「マノン」

「椿姫」には内容がかなり似ている「マノン・レスコー」という作品があります。

主人公のマノンはマルグリットと同じく高級娼婦です。フランスが舞台の作品で、神学生であるハンサムなデ・グリューとマノンは恋に落ちます。

しかし、貧乏な生活に耐えられないマノンは高級娼婦としての道を選びます。マノンもマノンの兄もお金に対する執着が強すぎて、犯罪行為を犯します。その結果兄は殺され、マノンはアメリカに流刑るけいになってしまいます。

それでもデ・グリューはマノンから離れることはありません。デ・グリューはアメリカまでマノンを追っていきますが、マノンは疲れ切ってデ・グリューの手の中で息を引き取ります。

効果的なシーン

振付のジョン・ノイマイヤーはこの「マノン・レスコー」という作品を「椿姫」の中にところどころ挿入しています。

このシーンが効果的にマルグリットの心情を表します。

「マノン」では主人公のふたりとも破滅してしまいます。

なぜマルグリットがアルマンの手に飛び込まなかったのか…。

マルグリットはマノンほど自分勝手な選択をせず、冷静に判断をくだしていきます…。

マルグリットとマノンが対比されることで、マルグリットの愛の深さを感じることができます。

本当にあった話

原作は1824年に生まれたアレクサンドル・デュマ・フィスによって書かれました。

1848年の春、デュマ・フィスが24歳のとき「椿姫」が出版されました。「椿姫」はデュマ・フィスの実際の体験に基づいて書かれました。

デュマ・フィスが20歳のころ、同い年のマリー・デュプレシに出会います。2ヶ月ほど深い関係となりますが、若いデュマ・フィスにはマリーを金銭的に満足させることができませんでした。

その後1年ほど関係が続きますが、デュマ・フィスはマリーのために30,000フランほどの借金まで作ってしまいます。現代の日本円に換算してみるとたぶん1,500万円ほどにまでなってしまうかもしれません。

出会ってから3ヶ月ほどたつと、マリーには他にもパトロンがいることを知ってしまいます。1年ほど関係を続けましたが、デュマ・フィスは自ら別れる決意をしたのでした。

別れの手紙が残っています。

「デュマ・フィスからマリーへの手紙」

愛するマリー、私は、私が願うほど、あなたを愛するに足るだけの金持ちではありません。そして、あなたが望むほど、あなたから愛されるほど貧しくもありません。お互いを忘れましょう。あなたにとっては、さして重要ではない名前を、私にとってはかなわなくなった幸運を。

私がどれほど悲嘆にくれているかを言う必要もないでしょう。あなたは、私があなたをどれほど深く愛しているかをよく御存知なのですから。お元気で。あなたは、私がどうしてこの手紙を書いているかが理解できないほど、気が多く、私を許さないほど、聡明です。

幾千もの思い出を胸に。

パリ、1845年8月30日真夜中 A.D.(アレクサンドル・デュマ)

2009年ハンブルク・バレエ団公演プログラムより

1846年デュマ・フィスは父親とスペイン、北アフリカと長期で旅行をしています。旅行から帰国すると悲しい知らせを受け取ります。

マリーはペレゴー伯爵夫人となっていて、しかも1847年2月3日に結核で亡くなっていたことを知ります。

これにショックを受けたデュマ・フィス。宿をとり、「マノン・レスコー」を再読します。

そして「椿姫」を1ヶ月で書き上げたのでした。

オススメDVD

パリ・オペラ座バレエ団による2008年「椿姫」のDVD作品です。

アニエス・ルテステュによるマルグリットと、ステファン・ビュリオンによるアルマン。

かなりの熱演で、白のパ・ド・ドゥでは、ステファン・ビュリオンの右ひじの白いシャツに赤い血のシミができています。

また、この映像はパリ・オペラ座バレエ団の初演の映像のため、振付のジョン・ノイマイヤーがカーテンコールに登場します!

まわりを固めるキャストもとにかくハマっていて、かなりオススメです!!

kazu

以上、初心者のためのバレエ「椿姫」でした。
ありがとうございました。